肌着の高機能・低価格化が“当たり前”に…老舗下着メーカーに突き付けられた課題 着目したのは“日常生活での煩わしさ”
2023-08-31 eltha
“インナー=高齢女性が着るもの”を一掃 90年代後半の“機能性肌着”登場への危機感
「この調査は女性に対して行なったもので、インナーを着用する理由として『薄手のトップスからブラジャーが透けて見えないように』といった身だしなみを上げる方が増えています。『インナーを着たほうが快適だから』という理由はすでに当たり前になっているようですね」(ウイングブランド商品営業部 戸崎 萌さん/以下同)
蒸し暑い季節は重ね着したくない、なるべく薄着で過ごしたいというのは一昔前の価値観。インナーを着たほうが実は涼しいという“事実”はもはや常識のようです。
インナーを着ると快適だけどダサい──。かつて若い女性の間にはそんな葛藤もありました。
「90年代前半に生まれた“ババシャツ”という呼び方によって、“インナー=高齢女性が着るもの”というややネガティブな印象になっていました。たしかに当時の女性用インナーのメインターゲットはミセス。ベージュ色でレースが付いていたりなど、若い世代がおしゃれと感じるようなインナーが少なかったのも事実です」
90年代後半に入ると繊維メーカー各社では快適性を追求した新素材の開発が盛んに行われるようになり、快適性を重視した商品が次々と発売になります。
ハイテク素材を使った衣類はそれ以前もありましたが、アウトドアや医療、スポーツといった専門領域向けのものがほとんどで、手に入りにくく高価でもありました。ファストファッションの台頭は機能性インナーを広く一般に普及させるとともに、「インナーは高機能かつ低価格」という価値観を定着させることにもなったのです。
「インナー市場の95%が2,000円台以下という調査もあり、見えないインナーにどこまでお金をかけるかはかなりシビアになっていることが伺えます。また昨今は、アパレルだけでなく、コンビニさんも機能性インナーに参入しています。下着の専門メーカーとして“高機能・低価格”を抑えながら、プラスアルファの価値を提供することは喫緊の課題になっています」
着心地の良さの先に見えた日常生活での快適性 下着専門メーカーとしての矜持
「インナーに対するお悩みを顧客ヒアリングしたところ、『洗濯のときにひっくり返すのが大変』『着用時に表か裏かを確認するのが面倒』という声が上がってきました。そこで表裏を目視してひっくり返し、整えて畳むという動作を計ったところ、30秒ほどかかったんです。みなさんが家事・育児やお仕事でお忙しい中、この小さなストレスを改善できないかと開発したのが、Wingの「綿の贅沢オーガニックフラットタイプ」でこの春夏に発売したノースリーブタイプとキャミソールタイプです。前後も表裏もない“4方向リバーシブル”という発想でした。それによって前後も表裏もなく着脱しやすくなっただけでなく、洗濯や畳む際の煩わしさをなくすことができたのです」
「この秋冬には、前後でUネックとVネックのどちらも着られるデザインのインナーを発売します。忙しい朝、トップスの首回りに合わせてインナーを選ぶ時間と手間の軽減にご活用いただけるのではないかと思います」
素材の進化で着用感の快適性はもはや当たり前。下着メーカーであるワコールが取り組むのは、日常のちょっとした負荷を軽減し、生活の快適性を高めるところまで踏み込んだ付加価値の提供。
「素材にこだわったインナーは豊富に出回っていますが、日本人の体型に合った下着に長年取り組んできた下着メーカーとしてパターンや縫製のノウハウにはまだまだアドバンテージがあると考えています。今後も顧客ヒアリングなどを重ねて、ユーザーの隠れた心理にまで応える商品開発をしていきたいですね」
(取材・文/児玉澄子)