仲直りできないまま突然死した夫、残された妻が長く壮絶な葛藤の末、辿り着いた境地「今のほうが幸せに生きていると思える」
2021-12-24 07:30 eltha
■夫と突然の別れ「生きていく気満々の状態で、突然パッと死んでしまったんだなと実感しました」
結婚4年目、3歳と1歳の子どもを残して、突然亡くなってしまった愛する夫。些細なことがきっかけで、夫の実家へ帰省中に夫婦喧嘩に発展。そこから2〜3週間ずっと口をきかず、冷戦状態になった。だが、「反省してる」「じゃあ今週末話し合おう」と、仲直りに向けて少しずつ連絡を取り始めた矢先、夫のまーくんはせせらぎさんと子どもたちを残して突然亡くなってしまう。心不全だった。
「旦那が死んだとき、新しいパソコンへの移行作業をしている途中だった形跡が残っていて、生きていく気満々の状態で、突然パッと死んでしまったんだなと実感しました。それがもう本当にかわいそうで仕方なくて、彼が存在したという事実を絶対に形にして残そうって決めて、ただそこだけを目標にして深く考えずにここまで来てしまった感じです。絵にしたほうが多くの方に知ってもらえるのではないかと、漫画も初めて描いたんです。それだけ必死でした」
漫画にしたことで、夫の生きてきた証みたいなものを読者の方たちに知らせることができたことが何よりも一番うれしかったそう。
「生きているときよりも認知されているかもしれない(笑)。この先どこに辿り着くのか、どんな見晴らしがあるのかはわからないけど、まだ山を登っている過程だと思っています」
せせらぎさんにとって夫の存在は、家族であり、旦那であり、子どもたちのお父さんであり、大好きな恋人でもあり、仕事仲間で師匠でもあり、親友でもあった。すべてのカテゴリーをひとりで賄っている人だったと振り返る。そんな最愛の夫の棺に、せせらぎさんは「ごめんなさいは?」と書いたという。
「そのときは怒りのほうが強かったんだと思います。ケンカをしていたことだけではなく、突然いなくなったことに対しても『は!?』という思いがあって。死別したことで感情の起伏が激しくなっていて、悲しみとか鬱状態とか反発とか色々あったんですけど、怒りがすごく大きくなっていたんでしょうね。怒っていたから『ごめんなさいは?』って書いたし、焼香も絶対しないって思っていました」
「1年目はどん底を這うように生き、2年目は普通に過ごす日々や幸せも多く感じられるようになり、3年目はどん底まで落ちることがなくなった」と著書の中で綴っているが、4年目となった現在、やっと本当にフラットになったという感覚なのだとか。
「旦那が死んだばかりの頃は、ずっとつらい気持ちを抱えながら休まらない状態を続けていたけど、ここにきて初めて心から安らげて、今までは何かをしなきゃいけないという強迫観念に駆られていたけど、『何もしないでも生きていけるかもしれない』と思えるようになりました」
夫の死によって、せせらぎさんの“夫婦観”にも大きな変化が訪れた。失って初めて好きなところしか見えなくなり、「いいところだけを見ておけばよかった」と今では強く思うようになったそう。
「後悔するのって、誰かに何かをしてもらえなかったということではなくて、自分がしてあげられなかったことなんだなって実感しました。相手がどうこうより、自分がどうしたいかだけを見ていけばよかったなって…」
■夫の死は悲しい出来事だったけど大きなきっかけでもあった「死んでくれてありがとよー!」といつか言いたい
「上の子は3歳だったので、多少は覚えているのかなという感じです。物事に対してあまり執着がない子なので、死んだと伝えたときも『ふぅん』みたいな様子でしたね。お父さんということはわかっているし、なんとなく死を認識はしているけれど、だからといってすごく悲しいとか、ワァーッと泣き出すみたいなことはなかったです」
そんな2人も、現在は“お父さんの死”を受け止めて、自分たちなりにきちんと向き合っているようだ。
「2人ともお父さんに対しては、 “いないお父さん”が『お父さん』として、ちゃんと2人の中にいるみたいな感じですね。『お父さんは死んだ』ということを、何のかげりもなく2人とも受け入れています」
夫が死んだことは悲しかったが、それを“不幸”にするかどうかは、「その出来事を受け取った自分次第なんだと感じる」とせせらぎさんは語る。
「元に戻れたらって思ってしまうこともまだありますが、今のほうが幸せに生きていると思えます。彼の死はとても悲しい出来事でしたけど、人として成長できた大きなきっかけでもありました。『死んでくれてありがとよー!』って、いつか大声で言えるくらいまでにいかなきゃなって思うし、いけるとも思うんですよね」